今年もやって来た磐越西線583祭り


2010.12/27


 またこの季節がやって来た! 583による「あいづライナー」の代走です。年に数度となく「あけべぇ」が検査や多客臨などに入ったりすると仙台の583が変わりを務めるというアレです。特に珍しくも無くなって来た感はあるのですが、定期的に往年の名車、583系特急寝台電車の原色を撮影出来るとあって、急に鉄分が欲しくなった時、人生に疲れた時、自分にご褒美をあげたい時・・・など使用用途は様々ですが、首都圏のテツにとってこれほどいい被写体はないでしょう。かく言う自分も多忙を極めた年末商戦がひと段落ついたこの頃、雪と闘う583の誉れ高き姿を拝みたくて、代走最終日の今日、会津に向かって出発することにしました。3日降り続いた暴風雪もひと段落し、明日の天候は一日中「雪」とのこと。今シーズン初の雪中走行に、いい大人がもう出発前から「ハァハァ」でした。

 21時ころ出発。順調に首都高、東北道を飛ばします。このまま行けば明日の一番の583の前に少し仮眠できそうです。宇都宮を過ぎ3車線が終わると徐々に高速道路は高度を稼ぎ那須高原へ登り詰めます。ここまでは星空が見えるほどの快晴。情報では磐越道はチェーン規制が敷かれているとのこと。どこで劇的にこの空模様が変わるんだろうとウキウキしながら北上していると、急にヘッドライトに雪がちらついて反射してきました。まだまだ路面は乾いたままの東北道から郡山JCTを経て磐越道に入るとうっすらと雪道に変わります。今季初のスタッドレスタイヤの恩恵を受けながら、磐越道に入ってすぐの五百川PAに到着。8時に目覚ましをセットして寝ることにしました。

 翌朝、昨夜から雪は5cmほど積もっています。雪道でスピードが上がらぬまま磐梯熱海IC出口を目指して料金所を通過すると値段は¥1500。そうでした。前日は日曜日だったので国庫補助によりこの料金で、福島県に到着です。思いもよらぬお得感にテンションはさらに上がります。磐梯熱海の市街から郡山方に少し戻り、線路と並走する国道の歩道橋から撮影することにしました。




屋根にもっさりと大量の雪を載せ、定時にやって来た「あいづライナー2号」。
2010.12/27  磐越西線  磐梯熱海〜安子ヶ島  EOS5D 100-400mm


 聞けばこの583、前日だかに大雪のため会津若松を出発できなくて、こんなに降り積もられていたそうです。大きな車体が一層デカク見えます。さてさて、雪も全く弱まる気配を見せず、時間が経つにつれ雪はさらにゴンゴン激しく降ってきます。道路に埋め込まれた消雪パイプの散水が追いつかなくなってきた場所がいくつかあったほどです。そんな中、次の撮影地を探します。数年前、同じく583を撮影したことのある中山宿駅手前のカーブに行ってみることにしました。国道から狭い旧道に入り駅方面へ。するとそこは一面の銀世界でした。線路の向こう側、つまりアウトカーブから望遠でブチ抜こうと思っていましたが、線路を横断する踏切は冬季閉鎖中で渡れません。クルマを停めようにも付近の狭い道にはテツクルマがすでに何台か駐車されていて、場所はありません。仕方なくここを諦めて会津若松方面にエスケープ。いくつか道路から撮れる撮影地を思い出しながら停まり、思い出しながら停まりを繰り返していましたが、連日の豪雪により歩道の除雪まで手が回らなかったらしく、どこも線路まで見通せるところはありません。こうなれば駅か踏切。クルマを西へ飛ばしていましたが、ついに時間切れ。国道から近くの上戸駅に到着。ホーム先端から駅進入を待ち構えているとすぐに接近放送があり、ホワイトアウトした彼方から583が現れました。しかし降り積もる雪にピントは合わず、結果失敗に終わってしまったため、このページの背景でごまかすことにします。

 次の4号まで3時間以上あったので当然昼寝です。その前に撮影地も探さなきゃならないのでコンビニで買った弁当を喰いながら次のポイントを探します。イメージ的には接近戦、望遠で雪を蹴散らしながら向かってくる「女王」をガチンコがイメージでしたが、沿線の見通しのいい踏切はどこも障害物が多かったり、冬季閉鎖の踏切で線路に近付けなかったりで1時間ほど雪原を彷徨っていました。ついに睡魔に負けてたどり着いたのは、手前に障害物の多い小さな踏切でした。その踏切のすぐ脇で昼寝。それから何分くらい経ったのでしょう。夢を見ていました。海岸線を行く線路、おそらく信越海線を2年前に形式消滅となったDD19が単機で一生懸命除雪している夢でした。近づいてくる真っ赤なDD19は自分の目の前で吹き溜まりに突っ込み、轟音とともにもがき苦しみ黒煙を上げているところで、目が覚め我に帰りました。ぼんやりした頭で周囲を見渡すと、道路の除雪車が私の停めたクルマの周りを上手くよけながら除雪をしていました。ディーゼルエンジンの音と、雪景色にこんな夢を見たんだと思います。しかし、スイマセン。除雪の邪魔をしちゃって・・・。おかげで道路幅が広くなり三脚を立てようと思っていたところも見事なお立ち台が出来ていました。それからしばらくすると「あいづライナー4号」の通過時間です。雪は少し小康状態にはなりましたが、防水防塵ではない自分の武器では、外で無防備に準備をしているのは少しためらわれます。やがて通過5分前。外に出て雪原の彼方にピントを合わせ、遠くから徒歩でやって来た同業の方と一緒に撮影の準備を始めました。




いろいろ障害物入り過ぎ。それにしても583は雪がよく似合う。
2010.12/27  磐越西線  翁島〜猪苗代  EOS5D 100-400mm


 思ったほど雪も舞わず、イマイチでした。さてお次は今の列車の折り返し、3号の撮影です。時間も夕方なので明るさとの戦いになりそうですが、諦めません。なるべく時間の早い郡山に近いところで撮影したいものですが、今日撮ってきた写真は直線区間ばかりだったので、カーブをカッコ良く突き進む姿を頂きたいと思い、再び中山宿の踏切に挑戦することにしました。本日2度目の中山宿にたどり着くと、先着の方がすでに2名ほど。無余地駐車にならないよう道路脇の雪壁にクルマのボディをこすりつけながら停め、挨拶をして準備に取り掛かりました。時間は16時を過ぎており、すでに露出はかなり厳しい状態になっていましたのでISO1600で絞りは解放です。さらに足場は降り積もったフカフカの新雪の上だったので三脚は立てられず、手持ちで待ち構えます。どうにか車体は止まってくれそうな厳しい条件です。しばらくすると定時に踏切が鳴り出しました。400mmを線路方にシュートして息を思い切り吸って、そして止めます。30秒・・・1分・・・。一向に列車は姿を見せないまま踏切は鳴り続けています。すると一緒に撮影していた方が「後ろだよ!!」と声を掛けてくれました。どうやら行ってしまったと思っていた郡山行きの普通電車が背後の駅に停車したところでした。この電車は次の磐梯熱海であいづライナーと交換するので、かなり遅れている様子。再び線路脇で降り積もられながらひたすら待ちますが、光量はますます暗くなる一方です。ファインダーを覗いて空シャッターを押してプレビューを見ては、シャッター速度を一段づつ遅める作業をひたすら繰り返していました。あと5分経ったら走行写真は限界。それで来なかったら撤収しようと決めたその時、踏切が鳴り出し「女王」は厳かに姿を現しました。その姿たるや神々しほどに青く、また美しくも逞しく、息もするのを忘れて連写を開始しました。




2010.12/27  磐越西線  中山宿〜磐梯熱海  EOS5D 100-400mm


 これにて無事に本日の撮影は終了しました。最後の最後で心に響く光景が目の前で展開されて感無量でした。このままここで祝杯をあげて電車で帰りたいという衝動に駆られましたが、当然クルマなので無理。郡山まで国道で降り、ラーメンを喰ってから東北道で帰ることにしました。